長い歳月をかけた出場への道のり
ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)は、山梨県と静岡県をまたいで開催される日本最大級のトレイルランニングレースである。距離は165km、累積標高は7,573m、制限時間は44時間におよぶ。
この過酷な舞台に、いよいよ自らが立つ時が来た。
2012年、トレイルランニングを始めたその年に第1回大会が開催されたUTMF。以来、いつかは出場し完走したいという夢を抱き続けてきた。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。
参加資格の獲得には、指定レースの完走によって得られるポイントが必要であった。ポイントが不足していた時期が数年続き、ようやく資格を得ても抽選に何度も落選。さらに、2020年・2021年大会はコロナ禍によって中止となった。
結果として、10年もの歳月をかけ、ようやくスタートラインに立つことが叶ったのである。
胸に迫る喜びと、消えない怪我の不安
出場が決まったことに大きな喜びを感じる一方で、大会直前に大きな怪我を負った。
3月中旬、登山道での転倒により、額を5針縫い、腰椎横突起にヒビが入る重傷を負った。医師からは一時的に出場は無理だと告げられ、自身でも出場を諦めた。
しかし、4月に入り「腰痛は完治する」との医師の言葉を聞き、再び希望を持ち始めた。とはいえ、軽いジョギングでも腰に鈍い痛みが残っており、不安が完全に消えることはない。
果たして、本番までに本当に痛みが消えるのか? そして、レース中に再発しないか?
こればかりは、本番を迎えるまで誰にもわからない。
UTMFという特別な舞台
UTMFは特別なレースである。距離165km、累積標高+7,573mというスペックに加え、2昼夜にわたるレースは、肉体だけでなく精神の限界も試される。
走力、補給戦略、天候対策、そして精神的なタフネス――あらゆる要素が求められる中で、今回のように不安を抱えた状態で挑むことは、より一層過酷な体験となる。
それでも、10年の時を経て辿り着いたこの舞台に、立つ意味は大きい。
それでも僕は、完走を目指す
これまでの10年間、UTMF出場を目標に積み上げてきたすべてを、この一戦に賭ける。
不安があるのは当然だ。しかし、その不安を抱えたままでも、前に進むしかない。
夢の舞台。初挑戦のUTMF。
その結末がどうなるかは、走ってみなければわからない。