信越五岳110kmに向けた夜間トレーニング
2021年9月開催予定の「信越五岳トレイルランニングレース110km」に向け、ナイトトレーニングを実施した。コースは奥多摩駅を起点に、石尾根縦走路を辿って東京都最高峰・雲取山までのピストン。距離にして約42kmのロング走である。
本番に備え、夜間走行への慣れと心身の強化を目的として行った。
深夜の奥多摩からスタート
スタートは東京の最西端、深夜の奥多摩駅。人の気配のない静寂の中、ヘッドライトの明かりだけを頼りに舗装路を登り、やがて石尾根の縦走路に入る。
一歩ごとに闇が深まり、全身の感覚が研ぎ澄まされていく。熊鈴の音が静寂を裂き、見上げれば、街の灯りでは決して見られない満天の星空が広がっていた。
ヘッドライトの先にある世界
ナイトトレイルでは、ヘッドライトが照らす範囲しか見えない。その限られた空間に意識を集中し、一歩ずつ確実に進む。自分自身との対話、自然との一体感――それが夜間縦走の醍醐味である。
奥多摩の闇は深く、しかし恐ろしいばかりではない。そこには、自分自身の中にある静けさと向き合える時間がある。
七ツ石山で迎えた夜明け
やがて空が白み始め、東の空が徐々に明るさを帯びていく。最初はぼんやりとしか見えなかった富士山が、光とともにその輪郭をはっきりと現した。
雲の海に浮かぶ山並み。七ツ石山の山頂で迎えた日の出は、言葉に尽くせぬ美しさであった。
夜が終わり、朝が来る。闇が光に変わる瞬間に立ち会うことで、自然のリズムが心身に染み渡っていく。
明けない夜はない
夜から朝へ、闇から光へ。その移り変わりを体感することは、単なる登山やトレーニング以上の意味を持つ。
どんなに長く感じた夜でも、いつかは終わる。苦しみや不安もまた、永遠に続くものではない。
このナイト練で心に刻んだのは、「明けない夜はない」という自然の摂理であった。信越五岳本番に向けて、大きな一歩を踏み出せた夜だった。