2年連続の中止となったハセツネ30K
2021年5月23日に開催予定であった「第13回ハセツネ30K」は、前年に続き中止となった。理由は言うまでもなく、新型コロナウイルスによる影響である。大会案内が手元に届いた直後の中止決定は、多くのランナーにとって落胆の一報となったことだろう。
私もまた、UTMF中止を経験している身であり、この気持ちは痛いほどに理解できる。
仲間と交わした「試走」の約束
この大会にエントリーしていたトレイルラン仲間の一人と、中止の発表直後にコース試走の約束をしていた。前週に単独で試走を行ったというが、道迷いをしたらしく悔しさもあったのだろう。「気が済むまで付き合うよ」と連絡したところ、「やはりコースをコンプしたい」と返事が来た。
ただし、大会中止に伴い「ゴロハチ林道」や「ヨメトリ坂」は走行禁止となったため、コンプリートは叶わず、代わりに約24kmの短縮コースを走ることになった。
短縮コースで味わったハセツネの厳しさ
当日は以下のルートを走った:
武蔵五日市駅〜広徳寺前〜変電所前〜今熊神社〜入山峠〜峰見通り〜市道山分岐〜市道山〜臼杵山〜荷田子峠〜盆堀山〜番行峠〜盆堀林道〜広徳寺前〜リバーティオ。
中でも「峰見通り」のアップダウンは相変わらず脚に堪えた。脚力を削られながらも、市道山分岐から番行峠、盆堀林道へと進んだが、私の気持ちは林道で切れてしまった。ロード区間ではパートナーに先行してもらい、自販機でドリンク補給をしてリズムを取り戻す。
最後のトレイルを越え、広徳寺からゴール地点とした「リバーティオ」までのロード区間を走り切った。
見えないフィニッシュゲートへ向かって
広徳寺からリバーティオに向けて、パートナーは静かにスパートをかけていた。言葉にはしなかったが、その背中からは気迫が溢れていた。
このレースに込めた想い、開催されなかった本番への情熱、それらすべてが「自分だけのハセツネ30K」となってパートナーの走りに現れていた。
仮想レースを走るトレイルランナーたち
この日、コース上では数十名のトレイルランナーとすれ違った。皆、大会中止を承知のうえで走っていたはずである。あるランナーは、実際にゼッケンを着けて本気の表情で走り抜けていった。
彼らは誰もが「自分だけのハセツネ」を走っていた。見えないフィニッシュゲートを心に描き、自分自身とのレースに挑んでいたのである。
心が熱くなった夏日
この日は夏日を記録し、気温は高かった。しかし、暑かったのは気温だけではない。行き場のない気持ちを胸に走るランナーたちの背中を見て、私の心にも熱いものが込み上げた。
大会は中止となった。しかし、それでも走り続ける理由がある。自分だけのゴールを目指して、誰かが今日も山を駆ける。