「ギアの選択」シリーズも今回が最終回となる。ラストは、トレイルランニング中の行動を支える補給食、水分、そして電解質について紹介する。走るエネルギーをどのように維持し、身体の機能をどのように保つか。ギアの中でも最も実践的で、そして最も重要なカテゴリーである。
補給食
Brand:セブンイレブン
Item:熟成紀州南高梅おにぎり、お赤飯、豆大福、黒糖わらび
Brand:ATHLETUNE
Item:Pocket Energy
今回の行動予定時間は約7時間であったため、セブンイレブンで購入した固形物4個と、お気に入りのエネルギージェル4個の計8個を準備した。補給計画は1時間ごとに固形物とジェルを交互に摂取するというもの。さらに1時間分の予備補給も用意した。
特におにぎりや和菓子(黒糖わらびなど)は行動中でも食べやすく、味の満足度も高いため、自分にとって定番の補給食である。
補給は体重、運動強度、時間によって最適解が変わる個別性の高い領域であり、経験を積むことで自分なりの戦略を確立したい。特に注意すべきは「ハンガーノック」である。これは激しい運動中に極度の低血糖に陥る状態であり、身体がまったく動かなくなる。予防にはこまめな補給が最善である。
固形物は腹持ちがよく比較的安価だが、重くかさばる。一方ジェルはコンパクトで吸収効率が高いが高価であり、空腹感を感じやすい。国内製のジェルの方が味や粘度において飲みやすいと感じている。様々な製品を試し、自分に合ったものを探すとよい。
電解質
Brand:森永製菓
Item:inタブレット塩分プラス
このタブレットは、汗で失われやすい塩分に加え、ビタミンB群、ビタミンC、クエン酸を含む。夏場の熱中症対策として特に有効である。発汗量に応じて30分から1時間に1粒を、水分と一緒に摂取することが推奨される。必要な個数をジップ付きポリ袋に入れて携行している。
水分
・いろはす 天然水 555mlペットボトル1本、バックパックの付属品のソフトボトル500ml、計1055ml 。
今回のコースでは御岳山・武蔵御嶽神社周辺に売店、自販機、水場が存在するため、夏場にしては少なめの水分量を携行した。気温が高くなかったこともあり、実際に消費した水分は約1800mlであった。
ソフトボトルはショルダーハーネスのポケットに、ペットボトルはバックパック内に収納した。いろはすのペットボトルは薄手で、飲み終わると小さく潰して収納できるため便利である。
水分補給用にハイドレーションパックを使うという選択肢もあるが、背負うスタイルでは水の残量が見えず、補給のたびにバックパックを下ろさねばならない。よって練習では使用を避けている。
長時間行動時に2リットル以上の水分を持つ必要がある場合には、1.5リットルのハイドレーションパックに加えて、プラティパスなどのウォーターリザーバーを併用するという手もある。
水分補給は「こまめに、少しずつ」が鉄則である。一度に大量に摂取すると、腹を下す原因となるため注意が必要である。
おわりに
「ギアの選択」は、トレイルランニングを始めたいという知人からの相談をきっかけに書き始めた連載である。全7回にわたり、自らが実際に使用している装備について具体的に紹介してきた。
これからトレイルランニングに挑戦する人にとって、ギア選びはひとつの大きな壁となる。最も手軽で確実な方法は、経験者と一緒にアウトドア専門店へ足を運ぶことである。もし身近に経験者がいない場合でも、専門店のスタッフに勇気を出して相談してみれば、きっと親身に対応してくれるだろう。
この連載が、これからトレイルランニングを始めようとする誰かが、自分らしいスタイルで山を楽しむための一助となれば嬉しい限りである。