ギアの選択の第4弾である。今さらながら、バックパックに収められている装備の多さに気づかされる。いったい何回で紹介し終えるのだろうか。今回取り上げるのは、夜間や虫、野生動物への備えに関する装備である。
LIGHT&SPARE BATTERY
Brand:PETZL
Item:ACTIK
たとえ下山予定時刻が日没前であっても、危機管理の観点からライトは必携である。特に夜間走行を含むレースでは当然ながら必携装備とされている。
私はレースでは、高照度かつ長時間使用可能なヘッドライトを選択しているが、夜間活動が長時間にわたらない場面では、軽量・コンパクトで必要十分なスペックのライトが理想的である。
ペツルの「ACTIK」は重さわずか86gで、最大350ルーメンの明るさを誇る。照射力、照射時間、防水性能、重量、価格など、ライト選びにおいて検討すべきポイントは多く、選択に迷いが生じやすい。ライトは年々技術革新が進んでおり、ギア選びの“沼”の代表格ともいえる存在である。
なお、予備電池としてアルカリ単四電池を3本携行している。
虫除けスプレー
虫除けを漢字で「吸血害虫忌避剤」と書くと、いかにも物々しい印象を受ける。筆者が使用しているのは、アース製薬の「サラテクトミスト リッチリッチ30」である。これを100円ショップの小型スプレーボトルに詰め替えて携帯している。
本製品は、蚊、ブユ、アブ、ノミ、イエダニ、マダニ、サシバエ、トコジラミ、ツツガムシ、ヤマビルなど、幅広い害虫に対して忌避効果を発揮する。
製品名にある「リッチリッチ30」は、有効成分であるディートが30%と、日本で使用可能な最高濃度で配合されていることに由来する。筆者の実感としても、虫除け効果は非常に高い。
使用後の効果は5〜8時間持続するが、12歳未満の使用は禁じられているため、家庭での使用時には注意が必要である。
POISON REMOVER
Brand:Dr.Hessel
Item:インセクトポイズンリムーバー
万が一、虫除けが効かずにアブやブヨ、蜂などの毒虫に刺された場合は、ポイズンリムーバーで毒液や毒針を吸い出すことが応急処置となる。吸引時に「チュポチュポ」という音がしてやや頼りなく感じるが、実際に使用すると、その後の腫れや痛みが大きく軽減される。
一部のレースでは、このポイズンリムーバーが必携品に指定されていることもある。
熊鈴
Brand:montbell
Item:キーカラビナ ベルナスカン 5S
トレイルランニング中に熊に遭遇した経験を持つランナーは少ないかもしれないが、私は何度か遭遇している。5年ほど前、奥多摩のハセツネコースである月夜見山付近を試走中、黒い動物が30メートル先のトレイルをゆっくりと横切っていく場面に遭遇した。その時は息を殺し、熊が遠ざかるのをじっと見守った。正直、恐怖を感じた。
トレイルランニングは野生動物の生息地に立ち入る行為であり、熊と出会う確率もゼロではない。特に出会い頭の遭遇は熊を刺激し、襲撃される危険性がある。そのため、鈴の音で人間の存在を熊に知らせ、接近を防ぐことが重要である。
ただし、人里に近い場所や登山者が多いルートでは、熊鈴を鳴らさないことがマナーとされている。状況に応じた使い分けが求められる。
まとめ
今回紹介した装備は、いずれも「備えあれば憂いなし」の代表格である。トレイルランニングにおいては、自然との対話だけでなく、不測の事態への備えもまた重要な要素である。ライト、虫除け、熊鈴。それぞれのアイテムを適切に選び、安全な山行を心掛けたい。