3人で挑む100mile駅伝、過酷な挑戦が始まる
2019年5月11日〜12日に開催される第4回トレニックワールド100mile & 100km in 彩の国。
今回、自身がエントリーしたのは、3人で挑戦する「100mile駅伝」である。総距離は162.8km、制限時間は33時間、そして累積標高は9,425mという極めてタフなコースだ。
このレースに向けて、3月末から4月末までに計4回のコース試走を行った。毎週末、奥武蔵に足を運び、コースの確認と体づくりに励んだ。敵を知り、己を知ることで、無謀な戦いを少しでも勝機あるものにしたいと考えた。
低山だからと侮るなかれ、奥武蔵の厳しさ
彩の国のコースは、標高900mに満たない山々が連なる。しかし、その実態は、累積標高9,400mを超えるハードな山岳コースである。これはエベレスト(8,848m)を超える標高差を登り下りするということに他ならない。
1つ1つの山は小さい。しかし、それらが連続して現れることで体力を容赦なく削っていく。見た目に反してアップダウンが激しく、脚も心も消耗する。試走を重ねるたびに「これは本当に完走できるのか?」という疑念が頭をよぎった。自信が少しずつ揺らぎ、「自分には無謀な挑戦だったのではないか」と思うこともあった。
試走で出会った、奥武蔵の原風景と信仰の歴史
それでも、何度も試走に通ううちに、奥武蔵という地域がどんどん好きになっていった。
標高こそ高くはないが、奥武蔵の山々は「里山」としての魅力に満ちている。
杉や桧の植林が多く、展望にはあまり恵まれていないが、その代わりに歴史や文化の香りが色濃く残っている。たとえば高山不動尊や桂木観音といった神社仏閣、古の人々が生活と信仰を寄せた痕跡が点在している。こうした史跡は、コースを彩る静かな見どころである。
また、春の試走では、梅、桜、ツツジといった花々が週ごとに移り変わっていった。山腹には昭和を思わせるような山上集落が点在し、どこか懐かしく、心が温まる風景が広がっている。現代では忘れられつつある「日本の原風景」がここには残されていた。
夜間走を担う第2走者として、心に刻む自然と歴史
今回、自分は駅伝の第二走者を務める。担当パートは夜間となるため、この里山の自然や文化の風景を目にすることはできないかもしれない。だからこそ、試走の中で見て感じた風景をしっかりと心に焼き付けておきたい。
夜の静けさと孤独の中を走るレース本番。目には映らずとも、試走で得た風景や匂い、風の感覚が、自分の背中を押してくれるはずだ。
願わくば、100mile駅伝の無事完走を。
このチャレンジが、自分にとってかけがえのない経験となることを信じている。