秋山山稜とは何か?知られざる前道志の山々
2018年4月7日、秋山山稜を日帰りで縦走してきた。
「秋山山稜」と聞いて、すぐに場所が思い浮かぶ人は少ないだろう。実際、「山と高原地図」にもその記載はなく、私が所有するいくつかの登山ガイドブックにも、その名は登場していなかった。
この山域を知ったのは、ヤマレコのある山行記録がきっかけである。興味を持って調べたところ、Wikipediaの「道志山塊」の項目に次のような記述を見つけた。「道志山塊の北側、上野原市秋山地区に広がる山々は秋山山稜、もしくは前道志とも呼ばれる。」
私なりの解釈では、秋山山稜とは中央本線・上野原駅の南側に広がる山並みで、標高1000mに満たない里山である。相模湖に注ぎ込む桂川と秋山川に挟まれた地形をなし、東の鶴島御前山から西の九鬼山まで、東西に長く伸びる稜線を指す。地名にちなみ「秋山山稜」と呼ばれるほか、道志山塊の前衛に位置することから「前道志」とも称されている。
秋山山稜・13座縦走のコース概要
今回の縦走コースは、以下の通りである。
猿橋駅 → 神楽山 → 御前山 → 馬立山 → 九鬼山 → 高指山 → 大桑山 → 高畑山 → 倉岳山 → 鳥屋山 → 矢平山 → 大丸 → 高柄山 → 鶴島御前山 → 上野原駅
標高こそ低いが、13座を縦走すれば十分にハードな山行となる。距離はおよそ27km、累積標高差は約2100m。「山と高原地図」によるコースタイムは16時間5分とされているが、今回は9時間30分で踏破した。
稜線を吹き抜ける風と静かな苦行
秋山山稜には細かなアップダウンが連続しており、脚への負荷が蓄積されていく。終盤には足がガクガクと震え、完全にスタミナ切れであった。
加えて、この日は風速5〜6mの冷たい風が稜線を吹き抜け、体温を奪っていった。ウィンドシェルがなければ、さらに過酷な山行となっていたであろう。厳しい条件下ではあったが、大きなトラブルなく縦走を終えることができたのは幸いである。
富士山展望と秀麗富嶽十二景の魅力
秋山山稜の最大の魅力は、富士山の眺望にあると言ってよい。大月市が選定する「秀麗富嶽十二景」のうち、九番山頂にあたる倉岳山と高畑山、十番山頂の九鬼山がこの稜線上に位置している。
快晴の日には、これらの山頂から美しい富士山の姿が望める。しかし、今回はあいにくの曇天で、全体にグレートーンの景色となってしまった。次回はぜひ、青空の下で再訪したいと考えている。
アクセスの良さと静けさが共存する山域
秋山山稜のもう一つの魅力は、アクセスの良さである。中央本線の各駅から登山口へとアプローチできるため、日帰り登山にも適している。
その一方で、今回の山行では、土曜日であるにもかかわらず出会った登山者はわずか6人。非常に静かな稜線歩きを楽しむことができた。この“アクセスの良さと静けさの共存”は、他の山域にはない特徴である。
熊の存在を忘れずに
登山道には複数の「熊出没注意」の看板が設置されていた。この地域には熊が生息している可能性が高く、入山時には必ず熊鈴を携行し、周囲への注意を怠らないことが重要である。
終わりに
秋山山稜は、知られざる静寂の里山であり、富士山の眺望と長大な縦走ルートを楽しめる魅力的な山域である。情報の少なさゆえに不安を感じるかもしれないが、地図と準備さえ整えれば、静かな稜線と達成感が待っている。
静けさと展望を求めて、次は晴天の日にもう一度歩いてみたいと思う。