本書『SHOE DOG―靴にすべてを。』は、NIKE創業者フィル・ナイトが自らの言葉で綴ったリアルな起業ストーリーである。
舞台は1962年。日本のシューズメーカー・オニツカ(現アシックス)の靴をアメリカで販売するところから始まる。資金繰りの苦悩、銀行との交渉、そしてブランド「NIKE」の立ち上げ。
さまざまな困難を乗り越え、1980年の株式上場へ至るまでの道のりが、赤裸々に描かれている。
起業とは、崖っぷちの綱渡り
ユーモアを交えた語り口ながら、フィルの道は常に試練の連続であった。
「起業とは、綱渡りであり崖っぷちの勝負だ」――その言葉の意味は、読み進めるうちに痛いほど伝わってくる。
起業に必要なものは何か?
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燃え上がる情熱
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行動力
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同じ想いを持つ仲間
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そして運さえも味方に付ける強運
そういった「泥臭いリアル」が、この本には余すところなく描かれている。
フィル・ナイトの言葉に共感した理由
私自身、勤務先で創業者のそばにいた経験がある。そのため、フィルが本書で語る苦悩や決断には深い共感を覚えた。
経営者の判断は、成功よりも失敗のほうが多い。
それでも、挑戦をやめずに前に進むことで、事業は成長していく。その過程にあるのは、格好良さとはかけ離れた、地道な積み重ねと無数の失敗である。
若者へのメッセージと、今こそ読むべき一冊
最終章でフィルは「死ぬまでにやっておきたいこと」の一つとして、自身の物語を語ることを選ぶ。
その語りは、後に続く若者たちへの熱いエールとなっている。
「最近の若者はチャレンジしない」と語られることもあるが、それは本当だろうか?
私はそうは思わない。この国では若者だけでなく、すべての世代が保守的になっているのではないか。
変化を恐れ、失敗を避け、何もしないことが安全とされる風潮――それこそが問題ではないだろうか。
この本は、起業を志す人だけでなく、何かに挑戦したいと願うすべての人にとって、勇気と気づきを与えてくれる。