北アルプス最深部をゆく、旅と挑戦のファストパッキング
2017年8月某日、ファストパッキング・スタイルにて、北アルプス・立山の室堂から新穂高温泉まで約50kmを、2泊3日で縦走した。
このルートは、黒部川源流域の核心部を辿る旅であり、かの「トランスジャパンアルプスレース(TJAR)」のコースの一部でもある。
地図上では美しい稜線が続くこの区間だが、実際には連続するアップダウンと岩稜帯が待ち受ける、極めてタフな道程である。
走力と山力の交差点にて
今回の山行は、男性3名・女性1名によるグループ山行であった。
中には縦走経験の浅いメンバーもいたが、全員が70〜100km超のトレイルレース完走者であり、脚力には一定の自信があった。
しかし、ファストパッキング特有の重装備に加え、連日の10時間超行動+睡眠不足が重なり、予定していたルートの一部を断念することとなった。
本来は三俣蓮華岳から槍ヶ岳を経由して新穂高温泉へ至る計画であったが、最終的には短縮ルートを選択した。
コースを縮めても、山の感動は縮まらない
ルートを短くしたことに対する後悔はない。
むしろ、今回の山行は刻一刻と変化する神々しい山岳景観の連続に、ただただ圧倒されるばかりであった。
特に、北アルプス縦走が初めての同行者が口にした
「一生忘れることはない」
という言葉は、この山旅の価値を象徴していた。
私自身、縦走は久しぶりであり、再び「純粋に山が好きだ」という感情が高ぶった。
ここ数年、トレイルレースに没頭していたが、レースから少し距離を置き、もう一度山そのものに向き合ってみたい――そんな気持ちが芽生える旅であった。
行程メモ
Day0|アプローチ
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22:30 東京・竹橋より「毎日あるぺん号」に乗車、車中泊
Day1|室堂〜スゴ乗越(小屋泊)
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7:00 室堂着
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7:30 室堂発
室堂〜獅子岳〜ザラ峠〜五色ヶ原〜鳶山〜越中沢岳〜スゴ乗越 -
17:30 スゴ乗越小屋泊(素泊まり) ※夕方から雨
Day2|スゴ乗越〜黒部五郎小舎(テント泊)
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3:00 スゴ乗越小屋発
間山〜北薬師岳〜薬師岳〜薬師峠〜太郎兵衛平〜太郎山〜北ノ俣岳〜黒部五郎岳〜黒部五郎カール -
16:00 黒部五郎小舎到着、テン泊 ※夜間も雨
Day3|黒部五郎〜新穂高温泉
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0:00 黒部五郎小舎発(小雨)
三俣蓮華岳〜巻道ルート〜双六小屋〜鏡平〜わさび平小屋〜新穂高温泉 -
9:30 新穂高温泉着〜奥飛騨の湯〜平湯温泉
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松本駅〜(JR)〜新宿駅
総まとめ
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総距離:49.94km
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累積標高差:3,453m
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活動時間:33時間35分
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コースタイム比:おおむね標準通り