春のウルトラ開幕、チャレンジ富士五湖に参戦
フルマラソンシーズンが一段落する4月。多くのランナーがウルトラマラソンに目を向け始める頃である。私もその一人として、2017年4月23日(日)開催の「第27回チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン」に出場した。
この大会は、日本最大規模を誇るウルトラマラソンであり、118km(5LAKES)・100km(4LAKES)・71km(3LAKES)の3カテゴリーに分かれている。私は河口湖・西湖・精進湖を巡る「3LAKES(71km)」にエントリーした。
距離71km、制限時間は11時間。約5kmごとに配置された19のエイドステーションと5つの関門を乗り越えながら進む過酷なコースである。
ウルトラランナーは変態?誇らしい称号に笑み
「ウルトラなんて走る人の気が知れない」
そんな言葉を浴びせられることもある。確かに、ウルトラマラソンの距離と苦しみは常人には理解しがたいのかもしれない。だが、私にとってはそれが誇りであり、変態と呼ばれることはむしろ最高の褒め言葉である。
今大会には、全カテゴリー合わせて総勢4,459名がエントリー。その規模は日本一を誇るにふさわしい。
スタート直後から胃痛に苦しむ展開に
午前7時、富士北麓公園をスタート。
まずは5kmで150m下り、その後5kmで175mを登り返す。さらに10km以降には225mを一気に下る区間がある。この長い下り坂で胃が揺さぶられたのか、20km手前から急激な胃痛に襲われることになった。
ペースを上げると鈍い痛みが増すため、脇腹を押さえながらやむなくペースダウン。
30kmを過ぎたあたりで痛みはさらに増し、胃腸薬を服用するもなかなか効果は現れず。
しまいには腹痛を伴い、トイレに駆け込むこと7回。この時点で、サブ7への挑戦は厳しい状況に追い込まれた。
ウルトラが突いてくる「身体の弱点」
50kmを過ぎたあたりから薬が効き始めるも、今度は膝や股関節の痛みが浮上。
ゴール直前、河口湖から富士北麓公園へ戻るラスト7kmは長い上り坂。最初に胃をやられたあの坂を、再び登り返す苦行が待っていた。
結果は7時間36分32秒。
サブ7は達成できなかった。仮に胃腸トラブルとトイレ休憩がなかったとしても、目標達成は厳しかったかもしれない。
ウルトラマラソンとは、身体の一番弱いところを確実に突いてくる競技である。
私にとって、それは「胃腸」だった。
苦しみの中にある、気づきと静けさ
ウルトラマラソンは、長時間にわたり自己との対話を強いられるスポーツだ。
思考を空にしたいと願いながらも、痛みや苦しみが心の中で渦巻く。
「胃が痛い」「膝が痛い」——そんなことを考えていると、いつの間にかネガティブな思考に囚われ、心が暗黒面に落ちそうになる。
その波に抵抗する気力は徐々に削がれ、やがて心が折れてしまう。
だが、そうした苦しみの中でも、ただ一歩ずつ前に進むしかない。
その積み重ねこそが、ゴールに辿り着く唯一の道なのだ。
ウルトラは、生きるという行為そのものの縮図である。
今回のレースでは目標を達成することはできなかった。
だが、得た気づきは大きい。
やはり、ウルトラマラソンは精神性の高い競技であると、改めて実感した。