2016年5月22日(日)、野辺山ウルトラマラソン100kmに初挑戦し、なんとか無事に完走を果たした。
だが、感想を一言でまとめるならば――「精も根も尽き果てた」。
それほどまでに、この大会は自らを極限まで追い込む過酷なレースであった。
「野辺山を制する者はウルトラを制す」
正式名称は「星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソン」。今回は100km・71km・42kmの3部門合わせて過去最多の3,357名がエントリー。
大会の大きな特徴は、前半の林道トレイル、そして後半の馬越峠という2つの難所を含むことである。ほぼ平坦な区間はなく、常に登るか下るかの連続。累積標高差は2,000m超という国内屈指の難コースである。
制限時間は14時間、そして7つの関門が待ち受ける。コース上には稲子湯・八峰の湯・滝見の湯という3つの温泉施設があるが、それらを楽しむ余裕は一切なかった。
直前100日間で1,000kmの走り込み
このレースに向けては、直近100日間で合計1,000kmを走り込んだ。基本は30km走を軸に、都内近郊の峠道でのアップダウントレーニングも積んだ。
目標タイムはサブ12(12時間切り)だったが、結果は13時間10分31秒。完走者1,257名中679位(上位54%)と、目標には大きく届かなかった。
美しさと残酷さが共存するコース
レースは午前5時にスタート。全種目一斉スタートのため、序盤はやや混雑した。
9km地点から林道トレイルに入り、標高1,906mのコース最高地点へと向かう。ここまでは景色も素晴らしく、トレイルランナーである自分にとってもっとも楽しい区間であった。
しかし、本当の苦しみはここから始まる。
灼熱の中盤、脱水と闘う
42km〜71kmのロード区間は、照りつける日差しと照り返しによる高温地獄。日陰がほとんどなく、脱水症状・眩暈・吐き気に苦しめられた。エイドごとに頭から水をかぶるも、次のエイドまでに全身が乾いてしまう。
ハンドボトル不携帯を後悔したが、幸いポケットに入れていた小銭で自販機から水を購入。残り40km以上、ペットボトル片手に走る羽目となった。
首に巻いた濡れタオル、小銭で買った水、エイドでの水かぶり――どれか1つでも欠けていたら、完走は叶わなかったかもしれない。
最大の難所・馬越峠
71km地点から始まる馬越峠の登り(標高差490m)は、精神的にも肉体的にも限界を超えていた。ほとんどのランナーが歩いており、自分も「電柱3本分走って2本分歩く」を繰り返して登った。
峠の先に待つ下り坂も急勾配で、膝に激痛が走る。痛み止めを2錠服用するも効果は乏しく、数百メートルごとに立ち止まって膝裏を伸ばす始末であった。
最後の10kmが最も長かった
90km以降もだらだらと続く登り坂が容赦なく視界に広がる。この「見える登り」に心を折られ、歩きが増える。脚は重く、気力も尽きた。
それでも、最後の1kmだけは気力で走りきり、フィニッシュラインへ。
その瞬間、魂が抜け落ちたかのように、全身がフラフラになった。
完走、それでも“完敗”
今年の男子100km完走率は59.8%(前年比−9.9pt)、女子は51.6%(前年比−3.3pt)。前年よりも暑さが厳しく、完走率の大幅な低下にも納得がいく。
「野辺山を制する者はウルトラを制す」。その言葉に偽りはなかった。
完走はできた。だが、内容は悔しさの残る“完敗”だった。
また、野辺山へ
敗北を知ることは、次なる成長への第一歩である。悔しさを糧に、より強くなって、来年も再び野辺山の地へ戻る覚悟だ。
今はただ、潔くこの一戦を――「完敗」と認めよう。