奥秩父の静寂な稜線を巡るロングルートへ
10月、2度目の山行は奥秩父。多摩川水源域に位置する笠取山、唐松尾山、和名倉山を日帰りで縦走するという、なかなか骨のあるルートに挑戦してきた。
起点は標高1,310mの作場平橋無料駐車場。そこから一休坂分岐を経て笠取山へ登り、唐松尾山、和名倉山と縦走して再び作場平へと戻る周回コース約28kmである。
このルートの参考コースタイム(『山と高原地図』基準)は約17時間。これを自身の走力で約9時間で踏破した。
水源を巡る静かな山旅の始まり ― 笠取山へ
まずは笠取山(1,953m)へ向かう。山頂からは、奥秩父主稜の山並みが幾重にも重なり、その先には冠雪した富士山の雄姿を拝むことができた。富士山の左手には大菩薩嶺の大きな山容がどっしりと構えている。
笠取山山頂のすぐ下には、「水干(みずひ)」と呼ばれる多摩川の水源がある。ここから滴り落ちる一滴の水は、やがて一之瀬川、丹波川、奥多摩湖を経て多摩川と名を変え、138kmの流れを経て東京湾へと注ぐ。水源に立つというのは、どこか神聖な感覚を覚える体験であった。
唐松尾山から和名倉山へ──静寂と集中の稜線歩き
展望のない唐松尾山(2,109m)を越えた先、立ち寄ったのが西御殿岩。ここからは360度の展望が開け、奥秩父の稜線や山塊を一望できる。人影もなく、絶景を独り占めする贅沢な時間であった。
その後、山ノ神土(やまのかんど)から北へと進路を取り、いよいよ和名倉山を目指す。道はやや不明瞭な箇所があり、赤テープを注意深く探しながらの行動となる。危険な場所はないが、集中力と注意力が試されるセクションであり、奥深い山域ならではの静けさと、どこか不気味な雰囲気が漂う。
やがて到着した和名倉山(2,036m)の山頂は展望のない苔むした樹林帯の中にひっそりと佇んでいた。小休止ののち、来た道を山ノ神土まで引き返す。
牛王院平から七ツ石尾根を駆け降りる
山ノ神土からは、高原状の牛王院平を経由し、七ツ石尾根へ。ここのトレイルは樹林帯を抜ける快適な道で、走りやすく、紅葉の美しさに気分も高揚する。
その勢いのまま、牛王院下まで一気に駆け下り、そこからは林道を走って三ノ瀬へ。さらに舗装路を進み、無事に作場平駐車場まで戻った。
ほぼ貸し切りの静寂な奥秩父縦走
週末にも関わらず、登山中に出会ったハイカーはごくわずかで、ほぼ貸し切り状態の山行となった。タイミングが良かったのかもしれないが、誰もいない奥秩父の静寂な山々をひとり占めできたことは、何ものにも代えがたい贅沢だ。
厳しさと美しさ、静けさが同居する、記憶に残る山旅であった。