2014年8月16日、南アルプスに位置する鳳凰三山に登ってきた。
しかしながら、稜線を覆う濃い霧のため、楽しみにしていた大パノラマの眺望は叶わなかった。
鳳凰三山とは
鳳凰三山とは、地蔵岳(2,764m)、観音岳(2,840m)、薬師岳(2,780m)の三山の総称であり、「鳳凰山」とも呼ばれている。南アルプスの中でも比較的アプローチしやすく、登山初心者の南アルプス入門にも適した山として知られている。
登山ルート概要
今回のルートは、標高1,380m地点まで車でアクセス可能な夜叉神峠登山口からの往復。
総距離は24.9km、累積標高は2,275m、山と高原地図のコースタイムでは15時間20分に設定されている。
スタート直後は、静寂に包まれた美しい樹林帯をひたすら登る。
南御室小屋を過ぎると、森林限界を超え、白砂と巨岩が広がる稜線が現れる。
晴れていれば、ここから白峰三山をはじめとした雄大な南アルプスの絶景が広がっていたはずである。だが、この日は終日霧が立ちこめ、視界は閉ざされていた。
それでも、稜線上に現れた虹がわずかに慰めてくれた。
地蔵岳の象徴「オベリスク」
最終目的地は、鳳凰三山の象徴ともいえる地蔵岳のオベリスク。
目の前に現れたその岩峰は、想像以上に大きく、神秘的な存在感を放っていた。
裂け目から登頂を試みる人の姿も見られたが、挑戦は叶わず、やがて戻ってきた。
信仰の対象として古くから敬われてきたこの山には、賽ノ河原に並ぶ無数の地蔵像が霧の中に佇んでいた。荘厳で静謐な雰囲気が漂う光景であった。
過去の記憶と再訪の意味
今から7、8年前、登山を始めたばかりの頃、会社の同僚3名と共に、鳳凰三山を目指したことがある。ルートは青木鉱泉からドンドコ沢沿いに進み、1泊2日で縦走する計画であった。
当時はまだ走る習慣もなく、体力も今ほどではなかった。重いテントを担いでの登山に消耗し、初日は鳳凰小屋でテント泊。翌朝は悪天候により、地蔵岳のオベリスクを拝むことも叶わず、下山を余儀なくされた。悔しさの残る思い出。
それからというもの、なんとなく足が遠のいていたが、今回ようやく再訪を果たした。
曇天で眺望は得られなかったものの、過去の記憶を清算し、自分の中で一区切りをつけることができた意義深い登山となった。
唯一の心残りは、白峰三山をはじめとした雄大な展望を味わえなかったこと。
この山とは、またきっと再会することになるだろう。