5月3日、新緑まぶしい奥武蔵の西部・中央部を縦走してきた。かねてより温めていた、武甲山、大持山、武川岳、伊豆ヶ岳など奥武蔵を代表する山々を一筆書きのように巡る周回プランを、ようやく実行に移すことができた。
スタートとゴールは「道の駅 果樹公園あしがくぼ」。そこから武甲山~小持山~大持山~武川岳~伊豆ヶ岳~正丸峠~刈場坂峠~カバ岳~丸山~日向山を経て起点へ戻る、38km/累積標高約2,800m超の大縦走となった。
山と高原地図でのコースタイムは17時間。それを休憩込みで約10時間で踏破した。
武甲山――信仰と採掘のはざまで
まず登ったのは、奥武蔵のランドマークとも言える武甲山(ぶこうさん)。登ろう、登ろうと思いつつ、なかなか訪れる機会に恵まれなかった山である。
山容はドーンとした存在感がある一方で、北側の山肌は石灰岩採掘により大きく削られた痛々しい姿を晒している。
採掘は大正時代から始まり、昭和40年代以降の高度成長期に急拡大。現在も操業中で、麓の巨大な採掘施設はまるで要塞のような雰囲気を醸し出している。日本における数少ない自給可能な鉱物資源とはいえ、自然愛好家としては複雑な思いを抱かずにはいられない。
その一方で、武甲山は山頂に御嶽神社を祀る信仰の山でもある。登山口の一の鳥居では立派な狛犬が出迎え、登山の安全を見守ってくれているかのようだ。
山頂からの眺望は素晴らしく、上州の浅間山や榛名山、さらには日光連山まで見渡せる。眼下には秩父の町が広がり、その対比が印象的であった。
生命力あふれる新緑と草花たち
この時期の山はとにかく美しい。新緑は目に眩しく、木々の息吹が全身に活力を与えてくれる。山歩きを始めてから少しずつ植物の名前を覚えるようになったが、それがまた楽しい。
登山道の脇では「カタクリ」が楚々と咲き、足を止めて見入ってしまう。かつてはこの球根から片栗粉が作られていたが、今はその名残を名にとどめるのみ。
また「バイケイソウ」の群生にも出会った。毒性があるとはいえ、これだけの数が集まると、逆に圧倒的な生命感が漂っていた。
人気の伊豆ヶ岳、静かな稜線歩き
中盤に差しかかった伊豆ヶ岳では、さすが人気の山だけあり多くのハイカーで賑わっていた。ちょうど昼時ということもあって、山頂には30人以上が腰を下ろし、和やかに食事を楽しんでいた。
そこを過ぎると再び静かな山道に戻り、刈場坂峠から丸山、日向山へと続く縦走路では、奥武蔵の山々が幾重にも連なっている様子を眺めることができた。
稜線から自分の辿ってきたルートを目で追う瞬間は、縦走ならではの醍醐味である。
ランナーとの出会い
伊豆ヶ岳から刈場坂峠の間では、偶然、川越から来たという一人のランナーと行動を共にすることになった。話をするうちに、奥武蔵ウルトラマラソンなど複数の大会にも出場している経験者であることが判明。
共通の話題も多く、自然と会話も弾み、楽しく歩を進めることができた。
この場を借りて、改めてお礼を申し上げたい。○○さん、また機会があればご一緒しましょう。
奥武蔵縦走の魅力と今後の展望
奥武蔵は「低山」と括られることが多いが、連なる山々のアップダウンは決して侮れない。
アクセス面ではやや不便ではあるが、それを補って余りある魅力にあふれている。
次は、飯能を起点とした奥武蔵ぐるりの縦走を計画している。まだまだ歩き尽くしたとは言えない奥武蔵の山々に、これからも挑んでいきたい。