Tor des Glaciers 2025、153時間23分2秒で18位。
今まで一番充実したレースで楽しく、
得るものが本当に多かったです。
1.タイム
完走タイムとしては2022年よりも8時間ほど遅くなっています。
2022年と比較しても事前の登坂力・走力・コンディションとも、
数字としてはかなり良かったので、
これにはいろいろな要因があるかなと思ってます。
■2023(Rifugio Grauson立寄の追加)・2024(セーニュ峠の追加)・2025(Cogne手前のルート変更)のコース変更により、
距離実測値460km→470km弱まで長くなり、
累積標高実測値D±1,500mほど増えたこと。
これだけでレースペースで5時間は長くなります。

Cogne手前のCol de la Rousse

Cogne手前のトレイルから街を見下ろす
■Rifugio Deli Angeliの使用中止・迂回と手前の麓の街Planavalでのエイド追加。
これにより、Planavalから次のRifugio Bezziまでは7時間以上補給無し。
エイドの数は変わっていないのですが、
もともとPlanavalでは公共水道付近で休む選手がほとんどで、
実質1減となったのは今思うと影響大きかったなと思います。
■Rifugio Prarayerの使用中止と4km先の駐車場での仮設テントエイド追加。
Prarayerはスタッフの方がとても親切で、
寝心地もよく、トイレも清潔でリフレッシュに最適でした。
仮設テントエイドは、キャンプ用の簡易ベッドが6台あり、
ジェットヒーターで暖をとりながら、すぐとなりのテーブルにエイドの行動食が置いてあり、
選手・サポート・スタッフの会話も聞こえ明るく、
「臨時テント」という感じでした。
■クサリ場・ハシゴのコース1の難所Grand Neyronに1cmぐらいの雪がついていて、
過去イチ滑りやすく、普段の倍時間がかかりました。
スタッフの方が追加でスタティックロープを足してくださっていて感謝。
ほかにも普段無い場所に6mmの補助ロープが追加されていた場所もありました。

雪のついた岩場
■マラトラ峠からの下りが夜間となり、
昼間よりも3時間長くかかったこと。
今思えば、もう少しだけ事前にペースアップもできたかなと。
■次に書きますが、
2日目の小屋仮眠時に隣りの選手の風邪がうつった? ことがありました…。
※順位については「こんなもんだろう」というところです。
Tor des Glaciersも6回目の開催となり、
参加者のレベルも上がって、Tor des Geantsとほとんど変わらない感じです。
今の自分の実力では「上手くハマって」トップ10に入れるかどうか、
10位代というのが妥当なところだと思います。

Moulin湖の仮設テントエイド
2.3日目後半からの体調不良(風邪がうつった?)
2日目の夜にRifugio Savoiaで2時間弱仮眠をとり、
起きると隣りの人がこちらを向きながら咳を頻繁にゲホゲホとしていました…。
「これはマズいかも…。」と思いましたがやはり後の祭り。
3日目の午後ぐらいから喉の痛みが出て、
ウイルス色の鼻水も出て、
頬の近くの扁桃腺が腫れ。
昨年のSwiss Peaks 660ででも出た「舌のしびれ」がひどくなりました。
この記事を書いているゴール後2日目の時点でも、
舌のしびれはまだひどく、鼻水も止まりません。
3日目の午後から5日目の午前ぐらいまで登りのペースが上がらず、
これだけで短くとも10時間はロスしたかなぁ… という感じです。
ちょっと悔しいけど、これだけの長いレース当然免疫は落ちるし、
仮眠の場所は「運」みたいなもので、
「完璧」は難しく、トラブルはつきものです。
3.外国人選手の登り方(脚の運び・ストック操作)
3日目から5日目の間は気持ちを切り替え、
登りで追い抜いていく選手の脚の運びとストック操作を、
後ろからじっと見て試すようにしました。
■明らかに脚を前方に出す距離が長い、着地点が前
■ストックの使い方、ストックと脚の運びは日本で紹介されているものと変わらない。
ただし、ストック自体に体重や力を意図的にかけるような使い方はしない。
あくまでも「良い姿勢・ポジション」をつくり、
股関節周りや臀部、腹筋背筋をきちんと使うことで推進力を発揮している感じ。
■40%、50%傾斜の急登でも、グイグイ足を左右交互に出しながら登っていく。
同じ足で1段ずつステップを踏みながら登ったりはしない。
■骨盤が前傾されており、急な登りになるほど前足部のみでの着地が徹底されている。
同様に骨盤の前傾の効果か、腕を上げる代償動作をせずとも、
大腿部が自然に・抵抗/ストレス無く上がっている。
いきなり完璧にマネはできませんでしたが、
ストックの上げ下げを腕の代償動作に似せることで、
終盤は大腿四頭筋・足底部の筋肉痛や疲れもほとんどなくなり、
登りのペースも回復し、なだらかなところは快適に走ることもできました。
4.良かったこと
①下りでしっかり走れたこと
まず、4回目の参加で、今までで一番下りをしっかりと走れました。
2023年頃から走り方や日々のトレーニングを変えたことで、
下りで大腿四頭筋が筋肉痛になることはほぼ無くなり、
いいペースで下れ、登りで抜かれた外国人の方を抜き返すことも多かったです。
Gressoney手前のCol Lazouneyからロードに出るまでの下りは52分と過去最速。
②睡眠時間をどこまで削れるかが分かったこと
2019年の1回目は、TJARなどと同じく3時間睡眠をベース。
2022年の2回目は、1時間だったり3時間だったりとマチマチで成り行きで押し切る感じ。
2023年の3回目は、序盤は1時間半ぐらいで押していて、後半もたなくなりライフベースで4,5時間。
ということで、今回は2時間をベースにして、
2日目夜:Savoia小屋で1時間50分(※隣の人の咳で目が覚める) ここまでの行動時間27時間、次の日の行動時間22時間
3日目夜:Dondena小屋で1時間45分(※自然と目が覚める) 次の日の行動時間16時間
4日目夜:Donnnasライフベースで2時間30分(※30分寝坊) 次の日の行動時間22時間
5日目夜:Gressoneyライフベースで4時間(※これは次の日の行動時間が長く意図的に) 次の日の行動時間25時間
6日目夜:Moulin湖駐車場エイドで2時間40分(※ゴールまで貫徹のため少し長め) 次の日の行動時間24時間
※途中、Donnas→Gressoneyの間でゴロ寝7分×2回
Gressoney→Moulin湖の間でゴロ寝20分×1回、7分×1回
その他石の上に座って休憩しながら1分ぐらい目をつぶるのが5回ぐらい
これで、目の前がグラグラしたり、蛇行するようなことはほとんどなく、
眠気による大幅なペースダウンもなくほぼイーブンで進めた感じでした。
おおよそ、2時間睡眠→21時間行動→2時間睡眠→21時間行動を繰り返していくといい感じです。
今まではどうしても「24時間サイクル」で考える部分があったのですが、
今回は24時間サイクルは考えず、あとは山小屋・ライフベースの場所が前後するのに応じて、
少し微調整できたのが結果的に良かったかなというところです。
③エイドの時間を削り過ぎず、食事・景色を楽しめたこと
2022年はタイム・順位狙いで、エイドでの滞在は5~10分で、
クッキーやケーキぐらいだけ食べ、水を補給のみでした。
景色の写真もほとんど撮らず、ひたすら前に進んだ感じ。
今回は、ほどほどに食事(パスタやパンなど)を楽しみつつ、
景色の写真も撮りながら進みました。
終盤では、Perucca小屋でラザニア、
Hotel Italiaではちょうど夕食時間でマルゲリータも堪能できました。
(※ただ、2019年にチーズの食べ過ぎで1区間リバースし続けた反省もあり量はほどほどに…)

ラザニアと野菜スープにパン

マルゲリータ

終盤の難所Gele

チェルヴィニア
あとは足裏のケア・クリーム塗布やキズパワーパッドの貼付は小屋で時間をかけても行い、
結果足裏のマメなどトラブルはなく、ペースダウンせずに進むことができました。
5.改善したいこと
来年は、もう少しだけ「攻めて」もいいかなと思いました。
マラトラ峠の到着をあと7時間早めていれば、
明るいうちにスピードを出してゴールまで下れ、
144時間になります。
2019や2022の少し短いコースであれば138時間ぐらいでしょうか。
144時間だと今年で11位、年代別3位で表彰。
体調さえ崩さず、登りのタイムを上げられればできるなと思います。
あとは登り方の見直し。レース終盤でコツはつかめたので、
これから1年かけてさらにレベルアップして「余裕度」を高めておきたいですね。
6.その他
昨年7月から富山県に転勤し、
冬の間どうやってトレーニングするかは手探りでした。
せっかく富山に来たのだからと山スキーを始め、
基本は休日にシールでの登りを3~5時間ぐらいと滑走、
あとは平日のトレッドミルでの傾斜走・ウエイトトレーニングでした。
トレイルランニング・峠走を再開したのは4月半ば、そこから4か月半でレース本番。
少し短かく、冬から夏のカラダ・走る動作に変更するのに苦労しました。
体重は4kg減、体脂肪率は4%減、1か月で1kg・1%減と、
落とし方としては、体重制階級競技のオリンピック選手の減量計画をほぼ踏襲したのが成功。
急速減量とならないように筋量を維持しながら、少しずつ落としていきました。
来シーズンは、冬の間ももう少しロードや、
雪の少ないところ(長野市か岐阜県の南の方)での峠走やトレイルランニングを増やし、
冬から夏へのカラダの移行をほぼシームレスに行いたいなと思っています。
いまの仕事の都合休みがとれるのはこの時期だけ。
来年もTor des Glacielsに参加しますよ。

来年もまたこのゲートへ