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ファストパッキング

2023 Tor des Glaciersは11位

written by 朽見 太朗 September 17, 2023

Tor des Glaciers、156時間15分27秒で11位。
成功レースか失敗レースかと聞かれれば失敗レースで、
いくつか致命的なミスもしましたが、
レースを投げず、猛暑と土砂降りの雨の厳しいコンディションを、
うまくまとめた感じです。

最初はレースの展開を書いていたのですが、違うなと思い以下書き直しています。

■トップの欧米の方との差
今回TOR450・TOR330ともトップ選手と日本選手の間には数十時間の差が生まれました。
何が違うのか、あらためてトップに近い場所で進んでいると分かるのは、
圧倒的な「登り」のスピードの違いです。
科学的な根拠は分かりませんが、
やはり骨盤の前傾・後傾などによる姿勢や筋肉のそもそもの違いを感じます。

決して日本選手が最大酸素摂取量が劣っているとかそういう訳ではなく、
平地や下りに関してはそれほど差がついていないか、
むしろ下りは日本選手の方が速いことも多いのですが、
あのダイナミックなストックワークと、大きな前方・上方への1歩はとてもマネできないな…
とあらためて実感しました。

試しに抜かれた選手のストックワークを試してみましたが、
ハムストリングと臀部の筋肉がとてももたないな… ダメージが大きすぎる、というのが実感で、
日頃のトレーニング不足ではなく先天的な違いによるものを感じざるをえませんでした。

■ストックワークと1本物・折り畳み
今回、湾曲タイプの1本もののN&W Curveを使用しました。
TORの参加者も、国籍を問わず利用されている選手の方をけっこう見かけました。
欧米の方のようにとんでもなく速く登れるようになるわけではありませんが、
登りのスピードが少し上がったり、動作がより安定して、
大腿部前面だけに頼ることなく、
ハムや臀部、ふくらはぎをバランス良く使った登りができたと実感しています。

ただ、↑の欧米の方との差とも関連するのですが、
日本選手として「どの部分」を優先すべきなのか、を考えたときに、
今回6日半使用し続けたいったんの結論は、折り畳み型の方がいい、というものです。

今回はストックにメーカーデフォルトのストラップを括り付け、
下りや平地のラン時は背中に背負ったり腕に持ったりしましたが、
やはり腕の上げ下げや腕振りがしにくく、不自然な動きとなり、
特にGlaciersは下りや小刻みなアップダウンの区間も長いので、かなりストレスを感じたのも事実です。
また、Glaciersのコースにはロープ・ハシゴ・岩場・ザレ場なども何か所かあり、
折り畳み式の方が下り区間は10分、15分は速かっただろうと思うところも多くありました。

登りで得られるメリットはそこそこ大きいのですが、
それ以上に下りでのデメリットが大きいとも感じましたので、
日本選手、自分に何が一番適しているのか、あらためて考えてみるいい機会になりました。
今は発売されていませんが、SHINANOの11.0など軽量なものもあります。
個人的には3本折り畳みよりも4本折り畳みの方が、ザック下部に取り付けられ、
ほぼストレスフリーで下りや平地を走ることができるのでおススメです。

あとN&W Curveであっても、ストックの付き方や地面への着地の位置、
動かし方のタイミングなどは、複数バリエーションをあらかじめ持っておいた方がいいと感じました。
特定の筋肉に負荷がかかり過ぎないように、いくつかの動きを使い分けるのがおススメです。

■脱水・食事と便秘
今回、レース史上初と言ってもいいぐらいの便秘に悩まされました。
まず水分については、ヨーロッパのレースの特性上、汗はすぐに蒸発して知らないうちに水分が失われるので、
量は十分に摂っていたつもりだったのですが、それでも十分とまではいかなかったようです。
塩熱サプリをとっていたことで痙攣が起きたりすることは無く、
尿の色も問題なく水分に関しては「そこそこ」という状況でした。

ただ、もう一つの原因と思われる食事に目を向けると、
Rifugioでの時間短縮を優先するため序盤はタルトケーキや行動食などの炭水化物のみ、
野菜や脂肪酸はほぼとらず、食事の量が圧倒的に足りていなかったこともあってか、
便秘の症状がひどくなっていくばかりでした。
Donnnasのライフベースではドクターの方にも相談したのですが、
clistere(イタリア語で「浣腸」)は無く、とにかく水を大量に飲むようにということでした。

結果Donnnasで水を3リットル飲み、
コーダ小屋までは進まずにDonnnasで2時間仮眠したことで、
すぐにとはいきませんでしたが翌日以降少しずつ症状は改善されていきました。
おそらくレース全体でトイレの時間だけで2022年よりも5~6時間ぐらいは多くかかった計算です。

もちろん、水分だけでなく、Donnnas以降は山小屋で積極的にパスタやポレンタを食べるようにし、
食事直後の動き出しはお腹がもたれないようペースを抑えたりもしましたが、
トータルで見たときには本来のカラダの調子に戻っていきました。
水分だけでなく、食事の重要性をあらためて認識した、今回最大の失敗であり収穫でした。

■2日目夜に寝られなかったこと
9/8(金)の22時にスタートして、
その夜は寝ずに行動し、約108km地点のRifugio Savoiaに着いたのが9/9(土)20:47。
ちょうどよい時間だと考え2時間仮眠しようとしたところ、TORに参加して以来初めて、
「寝付けない」という状況になりました。
また、3日目までは灼熱の暑さだったこともあり、↑で書いた脱水状態、
1年に1回のレースに参加している興奮もあってからか、
カラダが火照って眠れませんでした。

また、Savoia小屋は過去2回はとても静かで寝心地・居心地のいい場所だったのですが、
今回は参加選手も増えたこともあってか、飛ばしている選手が多く、
仮眠部屋はすでにほぼいっぱいで、人の出入りも多くかなりうるさかったというのもありました。
一応2時間ベッドに横たわってはいましたが、意識が飛んだのは30分ぐらいだったでしょうか。

自分のパフォーマンスが上がっていることもあり、
ファストパッキングを始めたころのように、
疲れでコロッと寝られるということが少なくなってきていて、
「余裕」がある状態でもあるので、
今思えば1つ先のRifugio Vittorio Emanuele IIまで進んでから寝ればよかったなと感じています。
翌日はかなりの眠気と、2日目とは思えない疲労感に悩まされ、かなりペースダウンすることになりました。

また、3日目は過去2回とも仮眠しているRifugio Dondenaで仮眠したのですが、
ここが前回とは異なり、タイム計測は無く、オフィシャルスタッフもいないようで、
小屋の方が半分ボランティアのような形で対応されていました。
みなさんお酒を飲みながら食事を楽しんでいるところで、
とても陽気に話しかけてくださり、食事も肉入りポレンタとデザートを出していただきました。
食事はこれ以上ないおもてなしをいただいたのですが、いざ仮眠しようとすると、
スタッフのみなさんの声が大きくてとても眠れない… というところで寝付くのに時間がかかりました。

1つ前のRifugio Miserinは、
2022年は逆に今年のDonndenaと同じようにオフィシャルスタッフの方がいなかったのですが、
今年はきちんとタイム計測やエイドとしての行動食の提供などがあり、運営もしっかりされていました。
今思えば、1つ前のMiserinで寝ておけばよかったなというのが反省点です。

■GPSウォッチの設定不良・忘れ物
今回、GPSウォッチの設定がなぜか初期化されてしまい、
コースナビゲーションの機能が「コース優先」ではなく「地図優先」になっていました。
それに気づかずスタートした関係で、
4日目のChardonneyからで、誤ってロードを下ってしまい、
結果約14kmもロードの下り登りをすることになりました…

↑のように、2日目、3日目の睡眠がうまくいかなかったこともあり、
頭がボーっとしている中で、夜間の時間帯に冷静な判断ができなかったんだなとも反省しきりです。
コース自体は事前に何度も確認して、地図も見返していたのですが、
なぜかGPSウォッチを信じてしまった、
あのときなぜケータイのマップを確認しなかったのか、
と今思うと感じるのですが、それが疲れが溜まったときのレースなんだとも感じています。

もう一つ、1つ目のライフベース、Cogneでは、
ヘッドライトのバッテリーをザックに入れ忘れ、
500mほど進んだところで引き返してもう一度デポバッグから出しなおすということがありました。

ライフベースでは、到着後はデポバッグを受け取り、
まずはGPSウォッチ・スマホの充電と、
ヘッドライトのバッテリーの入れ替え、
足裏へのクリーム塗布を行うのをルーティンにしているのですが、
このとき、ライフベースの方が慣れていなかったのかデポバッグを見つけられず、
5分ぐらいデポバッグを受け取るのに時間がかかったため、
先にフラスクに水を入れたりジュースを飲んだりしていました。
結果、ルーティンが飛んでしまい、バッテリーだけ入れ替え忘れてしまった、ということがありました。
このあたりも、疲れがたまっている中でのこともあったため、
何かもう少し「意識」だけではない、強制的なライト入れ替えのための工夫ができないか考えてみたいと思っています。

■まとめ
コロナ禍の1年前、2019年ぐらいから仕事が繁忙を極め、
なんとかトレーニングの時間を確保しつつ過労死しないギリギリのところでバランスをとってきたところで、
ようやく今年の7月ごろから仕事が落ち着き始め、生活のリズムも出てきたところで光は見えています。

今回、いくつか忘れ物をしてクールマイユール現地で調達したものもあったので、
次回のレース参加時は、もう少し「準備」に入念に時間をかけ、
丁寧に、余裕を持って参加できるとより楽しめるかな、と感じています。

Col Barassac Derèからの氷河、一番好きな景色です。

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朽見 太朗

朽見 太朗

スピードハイカー/スポーツ団体スタッフ

夏も冬も、日本アルプス、八ヶ岳、奥秩父の山をメインに歩いたり走ったりしています。
ファストパッキングの記録、景色の写真、ギアレビュー、山旅のプランニング、レースマネジメント、トレーニング方法。山を「速く」歩いたり走ったりすることに、色々な方向からアプローチしていきたいと思っています

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